種牡馬

種牡馬の評価は「産駒の重賞馬率」で決まる。ランキング上位には意外な名前も

種牡馬の優秀さをはかる指標として、ほどよい競馬では産駒の重賞馬率を推奨します。デビューした産駒がどれだけ重賞馬となるかの割合なのですが、これが結構しっくりきます。

産駒の重賞馬率ランキング

種牡馬の統計で主要といえるサイアーランキングは賞金での順位付けです。稼いだ賞金の多寡を提示することは、特に馬主視点では重要でしょう。しかし、種牡馬の優秀さをはかる指標としては適当でしょうか。日本の競馬は下級条件でも賞金が高く、産駒数が多ければある程度の上位に位置できます。また主要な競争は芝で行われますが、サイヤーランキングには障害競走が含まれ、ダート競争の比率も半分を占めます。

JRAでは過去に重賞を勝った馬と同じ命名を禁じています。血と名を遺すという点で重賞をひとつの基準とするのは適当と考えます。

重賞馬率は、種付け料の上下に直結する指標

以下がランキングになります。重賞勝ち馬が10頭を超える種牡馬の成績を集計しました。対象種牡馬はトニービンのデビュー(1992年)以後としています。

馬名 重賞馬率 産駒数 重賞馬 重賞数 勝馬率
サンデーサイレンス 10 % 1351 頭 136 頭 307 勝 66.6 %
ディープインパクト 8.8 % 1613 頭 142 頭 281 勝 63.7 %
キングカメハメハ 4.1 % 1612 頭 67 頭 134 勝 48.2 %
ステイゴールド 3.6 % 1130 頭 41 頭 96 勝 35.6 %
トニービン 3.4 % 775 頭 27 頭 61 勝 51.2 %
ブライアンズタイム 3.2 % 1284 頭 42 頭 81 勝 48.8 %
ハーツクライ 3.1 % 1378 頭 43 頭 80 勝 46.4 %
アグネスタキオン 3 % 973 頭 30 頭 55 勝 46.9 %
オルフェーヴル 2.9 % 653 頭 19 頭 27 勝 32.7 %
ロードカナロア 2.9 % 1008 頭 30 頭 64 勝 42 %
スクリーンヒーロー 2.6 % 461 頭 12 頭 21 勝 34.7 %
マンハッタンカフェ 2.5 % 1253 頭 32 頭 54 勝 37.7 %
フジキセキ 2.5 % 1461 頭 37 頭 75 勝 42.1 %
モーリス 2.4 % 458 頭 11 頭 16 勝 37.9 %
ドゥラメンテ 2.4 % 495 頭 12 頭 22 勝 38.3 %
キズナ 2.3 % 547 頭 13 頭 22 勝 44 %
ハービンジャー 2 % 975 頭 20 頭 37 勝 32.9 %
フレンチデピュティ 1.8 % 819 頭 15 頭 29 勝 42.8 %
ダンスインザダーク 1.8 % 1420 頭 26 頭 46 勝 32.7 %
ゼンノロブロイ 1.8 % 863 頭 16 頭 21 勝 37 %
ルーラーシップ 1.8 % 827 頭 15 頭 23 勝 37.2 %
ジャングルポケット 1.8 % 1100 頭 20 頭 36 勝 28 %
サクラバクシンオー 1.8 % 1209 頭 22 頭 42 勝 48.1 %
ダイワメジャー 1.7 % 1255 頭 22 頭 46 勝 45.3 %
スペシャルウィーク 1.7 % 1037 頭 18 頭 35 勝 37.8 %
オペラハウス 1.6 % 591 頭 10 頭 31 勝 26.9 %
シンボリクリスエス 1.6 % 1330 頭 22 頭 33 勝 36.3 %
ネオユニヴァース 1.4 % 1155 頭 17 頭 31 勝 34.4 %
クロフネ 1.4 % 1507 頭 22 頭 44 勝 41.7 %
タニノギムレット 1.3 % 940 頭 13 頭 24 勝 25.8 %
ゴールドアリュール 1.1 % 1053 頭 12 頭 25 勝 42.2 %
グラスワンダー 1.1 % 951 頭 11 頭 25 勝 22.5 %
タイキシャトル 0.9 % 1077 頭 10 頭 18 勝 35.7 %


数字について

対象は中央競馬の所属馬。対象競走は中央競馬の平地競走(芝、ダート)のみ、障害レースは除きます。日本の生産界では、障害競走を勝つことを目的としていないのが理由です。地方交流レースも除外しています。

重賞馬率

1回でも競走経験のある馬のうち、重賞を1勝以上した馬の割合。

産駒馬

1回でも競走経験のある馬の総頭数。

重賞馬

重賞競走を制した総頭数。1頭が複数勝ってもカウントは1。

重賞数

産駒が制した重賞競走レースの数。

勝馬率

1回でも出走経験のある馬のうち、1勝(重賞に限らない)以上をあげた馬の割合。

注意点

  • 2000年前後と比べて一世代の産駒数は増えている。加えて年間の重賞数も増加しているおり、近年の種牡馬のほうが重賞勝利数は多くなる
  • デビュー後間もない種牡馬の数値はアテにならない

解説

まず重賞馬を10頭も輩出できれば、種牡馬としては合格です。数百頭を越える種牡馬でわずかに30頭も達成していない数字です。重賞馬率以前に、表中の馬はみな優秀な種牡馬なのです。

一流種牡馬の目安は重賞馬率3%

上位2頭は抜けていますが、3%つまり100頭デビューして3頭が重賞馬になれば十分に優秀と評価できます。毎世代、複数馬が重賞を勝つ計算です。3%を達成している種牡馬のなかでステイゴールドが過去のサイアーランキングは最も低く、最高順位は3位です。数字をみて評価を改めた人もいるのではないでしょうか。

種付け料に当てはめると、3-4%で800~1000万円2%台で500-600万円ほどでしょうか。なので、初年度の種付け料が500万円に達するような馬は、重賞馬率2%以上を期待されていると言い換えてもいいです。かなり高い要求であることがわかると思います。

1%台後半の馬は年月を経て200-300万円程度に落ち着きます。こうしてみると500-600万円を維持しているダイワメジャーはやや過大評価に映りますね。

サンデーサイレンス

サンデーサイレンスの重賞馬率は驚愕の約10%。これは中央競馬でデビューさえできれば10%の確率で重賞を勝つことを意味します。実際にはサンデーサイレンス産駒同士で競い合うので、重賞クラスの能力をもった馬はそれ以上存在するということです。日本の血統トレンドを塗り替えた偉大な馬の数字は途方のないものといえます。

サンデーサイレンスはやはり別格

ディープインパクト

ディープインパクトの8%も相当に高い数字。比較されることの多いキングカメハメハとは倍以上の開きがあります。サンデーサイレンスの血が浸透し、日本の血統レベルが一段あがった状況で産駒たちは重賞を勝ち取っています。これは父サンデーサイレンスと遜色ないものと評価できるかもしれません。

種付け料4000万円はダテじゃない

勝ち馬率が低いのは一発大物タイプ

勝馬率が低く重賞馬率が高い種牡馬は、安定性に欠けるが大物を出すタイプ。表中のステイゴールドオペラハウスタニノギムレットなどの該当馬をみれば、それぞれの代表産駒が思い浮かんできます。これが生産の醍醐味なんでしょうね。

掲載予備軍

ルーラーシップ9頭
アドマイヤムーン8頭
スクリーンヒーロー8頭
オルフェーヴル6頭
キズナ5頭
ヴィクトワールピサ5頭