1998年に第1回が催されたセレクトセール。高値で落札された馬の動向は注目される宿命です。「高額馬=走る馬」なのかを検証すべく、3億1000万円以上で落札された馬を調べました。落札額が年々高くなっていることもあり、3億円馬はカットしました。
セールを引っ張ったディープインパクト産駒が去ったのちも活況は続いています。ただ高額帯の種牡馬がバラエティに富むものになったのが興味深いです。今後もどのような光景がひろがっていくのか注目していきます。
5億円以上
ディナシー 6億円
2006年 / 当歳牝馬
父キングカメハメハ
母トゥザヴィクトリー母父サンデーサイレンス
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者グローブエクワインマネージメント(有)
競走成績未出走
獲得賞金0円
血統
ダービーをレコードで制したキングカメハメハの初年度産駒。8戦7勝と全く底を見せずに引退した同馬の産駒に寄せられた期待のほどは、セールからも見て取れた。1億円を超えて落札されたキングカメハメハ産駒はほかに2頭、そのうちの1頭が1億1200万円で取引されたブロードアピールの2006で登録名はミスアンコール、ダービー馬ワグネリアンの母である。
母トゥザヴィクトリーはエリザベス女王杯を勝ち、ドバイワールドカップで2着の実績がある。ディナシーは3番仔にあたる。他の産駒は5番仔シンボリクリスエス産駒の牡馬プルスウルトラ(3戦1勝)が8000万円、9番仔キングカメハメハ産駒の牝馬トーセンビクトリー(中山牝馬S-G3)が1億500万円で取引されている。
落札
セリでは山本英俊氏の代理人が落札した。ダーレージャパンと最後まで競ったことにより価格が吊り上げられた。山本英俊氏の持ち馬にはスピルバーグ(天皇賞秋)、ペルーサ(青葉賞)、カジノドライヴ(ピーターパンS-米G2,フェブラリーS2着)らがいる。
その後
ディナシーは競走馬登録をされることなく繁殖入りしている。放牧中、落雷に驚いたことが原因で怪我をしたためといわれている。
アドマイヤビルゴ 5億8000万円
2017年 / 当歳牡馬
父ディープインパクト
母イルーシヴウェーヴ母父Elusive City
販売者ノーザンファーム
購入者近藤利一
競走成績若葉S-OP
獲得賞金9551万円
血統
母イルーシヴウェーヴはアイルランド産。競争成績は14戦6勝。イギリスでデビュー勝ちを収めるとフランスの厩舎に転厩。以降はC.ルメールを主戦とし、マイル重賞で活躍する。主な戦績はフランス1000ギニー優勝、2歳仏G1マルセルブサック賞2着、仏G1ロートシルト賞2着。アイルランドで2頭を生み、その後フランケルを受胎した状態でノーザンファームに輸入された。
落札
セリは1億円からはじまり、最後はアドマイヤの冠名で知られる近藤利一氏がサトノの冠名の里見治氏に競り勝った。ちなみに5番仔ディープインパクトの牡馬サトノソロモン(現役)は里見治氏が2億8000万円で落札している。
残念ながら近藤利一氏はアドマイヤビルゴのデビュー戦を見ることなく亡くなっている。遺言として長く確執が伝えられ来た武豊に主戦を託した。
その後
アドマイヤビルゴは現役馬。武豊を背にデビューから連勝を飾るが、ダービーへの出走を目指した京都新聞杯で4着。その後は日経新春杯に1番人気に支持される(10着)など重賞戦線に顔を出す。執筆時点では12戦4勝。
ショウナンアデイブ 5億1000万円
2020年 / 1歳牡馬
父ディープインパクト
母シーヴ母父Mineshaft
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者国本哲秀
競走成績
獲得賞金※1410万円
血統
母シーヴはアメリカ産、競走歴はない。アメリカで繁殖入りし、3頭を生んだのちに輸入された。初仔であるCathryn Sophiaがケンタッキーオークスを優勝している。本馬は6番仔。
母父マインシャフトはエーピーインディ直仔で2003年のアメリカ年度代表馬。当初は芝を使っていたが目立った成績は残せず、ダートに転向して一変した。種牡馬としてはG1産駒が3頭とやや寂しい実績。日本馬ではカジノドライヴ(ピーターパンS-米G2,フェブラリーS2着)が代表産駒である。
落札
セリは1億円からスタート。1分足らずで3億円を突破し、その後も1000万円ずつテンポよく積み上げていった。ショウナンの冠名で知られる国本哲秀氏は「10億までは降りるつもりはなかった」と語っており、5億を超えたところでハンマーが落ちた。
2020年はコロナ禍に見舞われ低調なセリも予見されたが、実質的なディープインパクトの最終世代ということもあって、記録的な落札額となった。
その後
ショウナンアデイブは現役馬。デビューから4戦連続の2着と勝ち切れず、3歳2月になって初勝利をあげる。執筆時点で7戦1勝。
4億円以上
ザサンデーフサイチ 4億90000万円
2004年 / 当歳牡馬
父ダンスインザダーク
母エアグルーヴ母父トニービン
販売者ノーザンファーム
購入者関口房朗
競走成績
獲得賞金7196万円
血統
母は牝馬として26年ぶりの年代表馬に輝いたエアグルーヴ。ザサンデーフサイチは第5仔にあたる。セールの時点で初仔のアドマイヤグルーヴが前年のエリザベス女王杯を制しており、エアグルーヴはすでに繁殖としての評価も高いものがあった。
父は菊花賞馬ダンスインザダーク。前年の菊花賞でザップザプレンティが産駒として初のG1馬となり、セール直前の安田記念でもツルマルボーイが優勝。さらには全妹ダンスインザムードがこの年の桜花賞を勝ち、血統面での評価を底上げした。2004年のセールは当歳馬からサンデーサイレンス産駒がいなくなった年でもある。取引額の上位4頭中3頭をダンスインザーダーク産駒が占め、サンデーサイレンスの後継としての地位を築くかに見えた。
落札
落札者は名物オーナーの関口房朗氏。フサイチの冠名で知られ、フサイチコンコルドとフサイチペガサスで日米のダービーを制すという偉業を成し遂げている。セレクトセールの高額馬落札の常連でもあった。なお、2010年に裁判所から差し押さえの対象として競走馬が指定され、ザサンデーフサイチのオーナーから退いている。
その後
大きな注目を受けたザサンデーフサイチだったが、デビュー戦後に骨折が判明。復帰後、2戦目にようやく初勝利をあげるが、再度の骨折。その後はタフに使われ、11歳まで現役を続けた。通算成績は41戦3勝、準OPの2着が2回あった。
引退後は種牡馬となったが種付け数も少なく、これといった馬は出ていない。
リアド 4億7000万円
2019年 / 当歳牡馬
父ディープインパクト
母タイタンクイーン母父Tiznow
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者近藤利一
競走成績
獲得賞金※1904万円
血統
母タイタンクイーンはアメリカで7戦未勝利。近親にはマイニング(ヴォスバーグS-米)がいる。
母父ティズナウは零細血統のマンノウォー系。BCクラシックをはじめて連覇した名馬で、種牡馬としても上位の評価を受けていた。代表産駒には最低人気でベルモントSを制したダタラやドバイワールドカップを優勝したウェルアームドなどがいる。
タイタンクイーンの第1仔、2番仔はそれぞれアメリカでG2勝ちを収めている。第3仔がマル外として登録されたストロングタイタンで、G3鳴尾記念を優勝している。第4仔である持込馬の半兄ミラアイトーン(OP馬)は6400万円で落札されている。さらに5番仔の半姉ギルデットミラーもマイルCで3着した活躍馬。
重賞を勝った第1仔から第3仔までの父がイマイチな種牡馬であったことも、タイタンクイーンの高い繁殖能力の裏付けとされ、本馬の高い評価へとつながった。
落札
落札者はアドマイヤの冠名で知られる近藤利一氏。
その後
リアドは現役馬。新馬戦を断然の人気の中3馬身差で勝利。続く出世レースの若駒Sでも人気を集めたが2着まで。以降も毎日杯5着、京都新聞杯7着と軌道に乗れず。執筆時点で4戦1勝。
モシーンの2021 4億5000万円
2022年 / 1歳牡馬
父モーリス
母モシーン母父Fastnet Rock
販売者 (有)ノーザンレーシング
購入者(株)ダノックス
競走成績
獲得賞金
血統
母モシーンはオーストラリアで18戦8勝。マイルから2500mのG1を4勝している。引退後は日本で繁殖入りした。本馬は7番仔。2番仔のディープインパクト産駒の牝馬プリモシーンはマイルG3を3勝しヴィクトリアマイルでも2着となっている。
父モーリスはロベルト系。現役時代は日本と香港でマイルから2000mのG1を計6勝。セール時点で2世代がデビューしピクシーナイトがスプリンターズSを勝つなど、産駒の重賞勝ちは計6勝、リーディングは9位。
落札
高い前評判に違わず2億円の一声からせりがはじまる。幼駒が終始活発な様子をみせるなか澱むことなく値が上がり続けた。落札者はダノンの冠名でお馴染みの株式会社ダノックス。高額落札の常連で所有馬はマイルのG1で強い印象。
セルキスの2021 4億1000万円
2021年 / 当歳牡馬
父キズナ
母セルキス母父Monsun
販売者ノーザンファーム
購入者小笹芳央
競走成績
獲得賞金
血統
母セルキスはドイツで4戦2勝。G2ディアナ(独オークス)トライアルを勝っている。本馬は9番仔。半兄にジャスタウェイ産駒のヴェロックス(皐月賞2着、ダービー3着、菊花賞3着)がいる。
母父モンズーン2000年代のドイツにおけるチャンピオンサイアー。ノヴェリスト(キングジョージ、バーデン大賞)、シロッコ(独ダービー、BCターフ)などクラシックディスタンスに強い産駒を多数輩出。日本馬ではオークス馬ソウルスターリングの母父として知られる。
父キズナはディープインパクト直仔。ダービーを勝ちフランスのG2ニエル賞では同年のイギリスダービー馬ルーラーオブザワールドを抑えて優勝した。2世代で8頭の重賞勝ち馬を出しているが、セール時点ではG1馬はなし。
落札
4000万からスタート。1億2000万円からは1000万円ごとにコンスタントにコールが響いた。ディープインパクトの産駒がいなくなった最初の世代の最高値。
落札者はホウオウの冠名の小笹芳央氏。代表産駒はホウオウアマゾン(アーリントンC)。
ダノンマイソウル 4億円
2020年 / 1歳牡馬
父ディープインパクト
母フォエヴァーダーリング母父Congrats
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者(株)ダノックス
競走成績
獲得賞金※162万円
血統
母フォエヴァーダーリングはアメリカで9戦2勝、G2サンタイネスSを勝っている。セール直前にはフランケル産駒のモンファボリが新馬戦を5馬身レコード勝ちを収めていた。本馬は第2仔。叔父のゼンノロブロイ(秋古馬三冠)のほか、近親にはワンブレスアウェイ(愛知杯-G3)など重賞馬が複数いるファミリー。
母父コングラッツはエーピーインディ直仔のアメリカG2馬。代表産駒はサンタアニタオークスなどG1を4勝したタービュレントディセント。
落札
落札者は(株)ダノックス。代表馬にはダノンシャンティ(NHKマイルC)、ダノンシャーク(マイルCS)、ダノンプレミアム(朝日杯FS)などがいる。
その後
ダノンマイソウルは現役馬。新馬戦4着を含め一度も馬券内に到達できず、執筆時点で4戦未勝利。
3億5000円以上
ヤンキーローズの2021 3億7000万円
2021年 / 当歳牡馬
父ロードカナロア
母ヤンキーローズ母父All American
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者(株)ダノックス
競走成績
獲得賞金
血統
母ヤンキーローズはオーストラリアで10戦4勝。芝1400mと2000mのG1を勝ち、2歳牝馬、3歳牝馬チャンピオンに選出された。本馬は3番仔。母系をたどるとビコーペガサス(スプリンターズS2着、高松宮記念2着)の名がみられる血統。
母父オールアメリカンはレッドランサム直仔。種牡馬としての実績は乏しく、ヤンキーローズのほかに重賞を勝った馬は1頭のみ。
落札
7000万円からスタートし、8000万円の次の一声で一気に3億円に。落札者は(株)ダノックス。
ホウオウリュウセイ 3億8000万円
2020年 / 当歳牡馬
父ハーツクライ
母ヒルダズパッション母父Canadian Frontier
販売者ノーザンファーム
購入者小笹芳央
競走成績
獲得賞金
血統
母ヒルダズパッションはアメリカで14戦8勝、G1バレリーナHを優勝している。第2仔のヨシダはアメリカ調教馬で、芝とダート双方のG1を制した。第5仔のサンクテュエールはシンザン記念勝ち。本馬は第8仔、ヨシダの全弟になる。
母父エルプラドはサドラーズウェルズ直仔のアイルランド2歳チャンピオン。アメリカで種牡馬となり、2002年にはリーディングサイアーに輝いた。代表産駒にキトゥンズジョイ(セクレタリアトS)、メダグリアドーロ(ホイットニーH)など。
当年の当歳セールはディープインパクト産駒が上場せず、どの種牡馬の仔が高値をつけるか注目されたが、ハーツクライ産駒が一番馬となった。
落札
落札者はホウオウの冠名の小笹芳央氏。
ダブルアンコール 3億7000万円
2017年 / 当歳牝馬
父ディープインパクト
母ドナブリーニ母父Bertolini
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者(株)DMM.com
競走成績
獲得賞金※2823万円
血統
母ドナブリーニはイギリスで11戦4勝。スプリント距離で結果を残し、主な勝ち鞍に2歳のG1チェヴァリパークSがある。3歳シーズンの終わりに繁殖牝馬セールで約1億2000万円の値で落札され、ノーザンファームに迎え入れられた。
初仔のドナウブルーはマイルの重賞を2勝、G1ヴィクトリアマイルではホエールキャプチャの2着に入った。2番仔ジェンティルドンナは年度代表馬を2回獲得した名牝で、3歳時のジャパンカップでは牡馬の三冠馬オルフェーヴルを競り落として優勝した。
母父バートリーニはイギリスのG3を勝ったスプリンター。スプリントC、ナンソープS、ミドルパークSでそれぞれ2着としたがG1には手が届かなった。種牡馬としての実績は芳しくなく、ドナブリーニが唯一のG1産駒である。
落札
稀代の名牝ジェンティルドンナの全弟妹がセールに登場するのははじめてのことで、当年の目玉の一頭に。落札者は(株)DMM.com、馬主事業に参入を決めた1年目からの大商いとなった。なお、話題馬らしくダブルアンコールの名付け親は作曲家の秋元康氏。
その後
執筆時点でダブルアンコールは13戦2勝の現役馬。
ザレストノーウェア 3億6000万円
2019年 / 1歳牡馬
父ディープインパクト
母ミュージカルウェイ母父Gold Away
販売者ノーザンファーム
購入者近藤利一
競走成績
獲得賞金※251万円
血統
母ミュージカルウェイは主にフランスで走り通算39戦8勝。重賞に初出走したのは4歳の秋。そこから中距離重賞で計3勝をあげるも、G1クラスの馬ではなかった。
母父ゴールドアウェイはヌレイエフ系。ムーランドロンシャン賞2着2回などG1での2着が4度ある。代表産駒アレクサンダーゴールドラン(プリティポリーSなどG1を5勝)が唯一のG1勝ち馬。
全姉ミッキークイーンはオークスと秋華賞を制した世代トップホース。半兄トーセンマタコイヤも準オープンを勝っている活躍馬。
落札
デビュー前に落札者の近藤利一氏が亡くなったことで名義が変更となり、登録名もアドマイヤステラからザレストノーウェアとなった。
その後
ザレストノーウェアは現役馬。デビュー4戦で最高着順は5着。その後障害を二度走り、平地に戻る。執筆時点で9戦未勝利。
ラストグルーヴ 3億6000万円
2011年 / 1歳牝馬
父ディープインパクト
母エアグルーヴ母父トニービン
販売者(有)ノーザンレーシング
購入者グローブエクワインマネージメント(有)
競走成績
獲得賞金600万円
血統
母は名牝エアグルーヴ。ラストグルーヴは第10仔にあたる。半姉アドマイヤグルーヴ(エリザベス女王杯2回)、半兄フォゲッタブル(ステイヤーズS-G2、菊花賞2着)、半兄ルーラーシップ(クイーンエリザベスC-香、宝塚記念2着)、全姉グルヴェイグ(マーメイドS-G3)と兄姉の計4頭が重賞勝ちを収めている。近親にも活躍馬が多く、高い繁殖価値も見込める血統である。
父ディープインパクトは初年度産駒のマルセリーナが桜花賞を、リアルインパクトが安田記念を制し、大種牡馬としての歩みをはじめるところだった。
落札
落札者は山本英俊氏の代理人。前述の通りスピルバーグ(天皇賞秋)などが代表馬。
その後
ラストグルーヴは体質の弱さもありデビューは3月までずれ込む。人気に応え初陣を勝利で飾るが、その後はターフに戻ることなく引退、繁殖入りとなった。
繁殖入り後は、第2仔ランフォザローゼス(青葉賞2着)、第3仔レッドルレーヴ(フラワーC2着)が重賞戦線を賑わし、良血に違わぬ結果を残している。
3億1000万円以上
トーセンダンス 3億3500円
2002年 / 当歳牡馬
父サンデーサイレンス
母ダンシングキイ母父Nijinsky
販売者社台ファーム
購入者島川隆哉
競走成績
獲得賞金0円
血統
母のダンシングキイはアメリカ産。競走歴はなく、3シーズン繁殖生活を送ったのちに日本に輸入された。日本での産駒の活躍ぶりは凄まじく、日本での初産駒の第4仔エアダブリンは青葉賞を勝ちダービーはナリタブライアンの2着。サンデーサイレンスの初年度産駒となる第5仔ダンスパートナーがオークス、そして第6仔ダンスインザダークが菊花賞と、3年連続でクラシック戦線の中心となる馬を送り出した。
トーセンダンスは第12仔にあたる。ダンシングキイの産駒がセレクトセールに登場するのははじめてだった。なお第11仔ダンスインザムード(桜花賞)は、当年時はまだ1歳でデビュー前である。
落札
落札者はトーセンの冠名で知られる島川隆哉氏。代表馬にトーセンジョーダン(天皇賞秋)、トーセンラー(マイルCS)がいる。当年のセールで1億円を超える値がついたのは7頭いたが、いずれもサンデーサイレンス産駒だった。全体の11番目、トーセンダンスの約5分の1の7000万円で落札された同じくサンデーサイレンス産駒の牡馬が、のちに日本の至宝と呼ばれることになるディープインパクト。
その後
1歳時に腰椎を骨折し、順調さを欠いたまま3歳の4月デビューの初出走となった。これだけの血統馬にかかわらずデビュー戦は4番人気と低い評価で、レースも勝ち馬シャドウゲイト(シンガポール国際)から3秒近く離される、まさに大敗を喫した。ターフで再び姿をみることはなく、2か月後には引退が発表された。それでもさすがは血統馬、全兄ダンスインザダーク産駒が好調だったこともあり種牡馬入りが決まった。
少ない種付け数ながら、菊花賞をゴールドシップの3着としたユウキソルジャーや紫苑S(OP)を勝ったディアアレトゥーサを出した。種牡馬として良血馬の片りんを見せたといえよう。
フサイチジャンク 3億3000円
2003年 / 当歳牡馬
父サンデーサイレンス
母セトフローリアン2母父Bellotto
販売者社台ファーム
購入者関口房朗
競走成績
獲得賞金8909万円
血統
母セトフローリアン2は豪州で38戦5勝。主な競走実績に中距離のG3勝ちとG1オーストラリアンオークス(芝2400m)2着がある。2番仔のサンデーサイレンス産駒タイガーカフェはセレクトセールで1億円で落札された馬。皐月賞で先行から粘りをみせノーリーズンの2着となったが、その後は精彩を欠き重賞では一度も連対を果たしていない。フサイチジャンクは6番仔にあたる。
母父ベロットは英国で7戦2勝。英2000ギニーで2着、英ダービーで3着の実績がある。ミスタープロスペクターの直仔で豪州で多数の重賞馬を輩出している中堅種牡馬。
落札
父サンデーサイレンスのラストクロップ。6000万からセリがはじまり瞬く間に値があがった。競り落としたのはお馴染みの関口房朗氏。「いい馬だからこそ、値が張る」のコメントが眩しい。
その後
メディア絡みの命名も相まってデビュー戦から高い注目を集めた。それに応えるようにデビューから4連勝、無敗で皐月賞に駒を進める。重賞3勝のアドマイヤムーンに次ぐ2番人気に推された皐月賞だったが、後方の位置取りも災いし、先行したメイショウサムソンに遅れた3着と敗れる。
混戦模様となった続くダービーでも2番人気と期待を集める。中団からレースを進め、直線では外に持ち出し追い出しにかかるが、そこからまったく伸びずに惨敗。
輝きは突如として失われる。それ以降はまるで別馬のようになってしまい、11戦して掲示板に載れたのがわずかに1回だけ。6歳になり地方競馬船橋に移籍、2戦ともに大差の殿負けを喫し引退の運びとなった。
シャンパンエニワンの2022 3億2000万円
2022年 / 当歳牡馬
父ドゥラメンテ
母シャンパンエニワン母父ストリートセンス
販売者吉田俊介
購入者レッドホース
競走成績
獲得賞金
血統
母シャンパンエニワンはアメリカで11戦3勝、ダートG2ガルフストリームパークオークスを勝っている。
父ドゥラメンテは二冠馬。早逝したため5世代目となる2022産駒がラストクロップとなる。当年の春はスターズオンアースが牝馬2冠、タイトルホルダーが天皇賞春、宝塚記念を連勝とG1を計4勝、主役と呼べる活躍だった。
落札
販売者の吉田俊介氏はノーザンファーム副代表。5000万円からはじまったセリは9000万円から一気に2億円までワープ。勢いは衰えることなく3億越えで決着した。
カーム 3億2000円
2000年 / 当歳牡馬
父サンデーサイレンス
母フランクアーギュメント母父Argument
販売者ノーザンファーム
購入者岡田美佐子
競走成績
獲得賞金0円
血統
母フランクアーギュメントはフランスでリステッド競走2勝を含む14戦3勝。その後アメリカに移籍し、9戦未勝利ながら芝の中距離G1フラワーボウルHで2着している。半兄フランクリーパーフェクトもフランスからアメリカに移籍し、こちらはハリウッドターフCを制しG1馬になっている。ほかに目立った近親馬はいない。
母父アーギュメントはテディ系のスタミナ馬。競走馬としてワシントンDC国際とガネー賞に勝ち、凱旋門賞を2着している。重賞を勝った産駒はいない三流種牡馬。
落札
血統面ではさして強調する材料はないのだが、父似の見栄えのする馬体で3億を超える価格で落札された。購入したのはマイネルの冠名で知られるラフィアン。
その後
大きな期待を背負い、調教でも抜群の動きを見せるもデビュー前に重度の骨折を負う。未出走での種牡馬入りも検討されたが、なんとかデビューにこぎつける。しかし3歳の7月から9月まで3走するもいずれも惨敗。中央では入着賞金すら得られずに岩手競馬へ移籍となった。その後は27戦14勝、獲得賞金はわずかに757万円に過ぎなかった。
引退後は青森で種牡馬となった。中央競馬で出走した産駒が4頭、勝ち馬が1頭で計2勝の記録が残っている。
アウェイクの2022 3億1000万円
2022年 / 当歳牡馬
父ブリックスアンドモルタル
母アウェイク母父ディープインパクト
販売者 (有)ノーザンレーシング
購入者国本哲秀
競走成績
獲得賞金
血統
母アウェイクは15戦1勝。低人気ながらフローラSを3着しオークスに出走(12着)している。半兄に朝日杯FSを勝ったゴスホークケン、全姉の産駒にステラヴェローチェ(神戸新聞杯、ダービー3着)がいるファミリー。
父ブリックスアンドモルタルはアメリカの芝のG1を5勝し、2019年の年度代表馬に選出されている。引退後は日本で種牡馬入り。セール時点で産駒はデビューを迎えていない。
落札
3000万円からセリが始まるとテンポよく2億5000万円まで掛け声が続く。3億を超えたところで決着がつき、ショウナンの冠名で知られる国本哲秀氏が競り落とした。