種牡馬

種付け料は何に影響されて上がったり下がったりするのか

種牡馬の種付け料は毎年のように変動します。発表された価格を前年に比較しながら、その変動理由を探るのですが、なかには分かりにくい場合もあります。

初年度の種付け料の相場でも書きましたが、種付け料は繁殖牝馬の集まり具合に大きく影響を受けます。繁殖牝馬を有する生産者は、よりセールで高く売れる仔を生産するために配合相手を選別します。では、どういった事情が生産者(繁殖牝馬側)に影響を与え、それに伴い種付け料が変動するのでしょうか。

産駒の活躍が変動の主要因

産駒の競走成績はストレートに生産者に影響します。

活躍馬が現れないと種付け料は徐々に落ちていきます。種付け料が落ちるというのは期待度が下がるのと一緒のことなので、繁殖牝馬の集まりが悪くなり、その質も落ちていきます。それがさらに産駒の活躍する可能性を低め、と悪循環をたどります。

産駒の活躍こそがすべて。

G1での走りが一番のアピール

生産者に好印象を与える、もっとも分かりやすい例はG1での優勝です。大舞台で産駒が活躍すれば種牡馬の評価は高まります。近年でもっとも上昇率の高かったスクリーンヒーローは、モーリス(年度代表馬)とゴールドアクター(有馬記念)の2頭の活躍により80万の種付け料が3年後になりました。

よりダービーに条件の近いG1ほど価値が高く、その勝利は生産者に強く訴えかけます。そこそこ強い馬では足りません。

複数馬の活躍求む

キタサンブラック(年度代表馬)が活躍したブラックタイドも80万円から300万円まで値上がりしましたが、繁殖牝馬の集まりが悪く翌年には200万円に減額となりました。

1頭だけの活躍では上昇もすぐに頭打ちです。

初年度産駒の走り

どの生産者も注目するのが初年度産駒のデビューです。それまでの「走りそう」という期待から現実の走りとなって、冷静にその能力を見極められます。

もちろん早い時期から勝ち上がる馬が多ければ生産者にさらなる期待を抱かせます。

反対に続々とデビューする2歳馬がまったく奮わなければ、高額馬ほど翌5年目の種付け料は減額に追い込まれます。

減額より厳しいクビ宣告

社台スタリオンステーション(社台SS)に種牡馬入りした期待馬でも事情は同じです。

早く活躍馬を出して種牡馬を軌道に乗せるため、新種牡馬には社台系の繁殖牝馬を多く配合し優遇します。ただこれには、早めに種牡馬としての能力を見極めたいという思惑も潜んでいます。

デビューした産駒の走りが著しく期待を裏切るものであれば、種付け料の減額にとどまりません。社台SSから追放(他牧場へ移動)されます。

社台系の質の高い繁殖牝馬で結果が残せなければ、あとは想像がつきますよね。毎年、社台SSからの移動情報が発表されますが、数年で移動する馬は見切りをつけられた馬といっていいです。



産駒デビュー前の変動

産駒がデビューする前でも種付け料は変動します。

2年目の値下げ

初年度の種付け頭数が少なければ、強気な価格設定が裏目に出て繁殖牝馬が集まらなかったと解釈できます。

3年目の変動

3年目になると生まれた当歳(0歳)馬の評判が聞こえてきます。ただ、まだ競走馬としての資質の判定が難しいので、当歳馬の出来で価格が上下することは少ないです。

それにもかかわらず値上げした場合には、生産の現場で著しく幼駒の評判がよいと判断できます。値上げした種付け料でも満口(応募締め切り)になるようなら間違いないです。

産駒デビュー前の値上がりは、期待度もアップ。

他の種牡馬との比較

種牡馬も競争の世界です。他馬の動向にも左右されます。

新種牡馬

毎年のように新しい馬が種牡馬になるので、それにより影響を受けます。生産者がより魅力を感じる馬がいれば、そちらに繁殖牝馬が流れます。とくに血統構成が近かったり、実績のない既存種牡馬ほど影響を受けやすいです。

代替種牡馬としての需要

コパノリッキーは2018年に80万円から180万円まで値上がりしました。これは父であるゴールドアリュールが死亡したのが起因します。

上位互換となる馬がいなくなったことにより、供給側がその需要を見込んで値上げをおこなう場合です。

種牡馬の年齢による減額

高齢になるほど種付け料は減額し、種付け頭数も落ちていきます。若い種牡馬のほうが活力があり、未知なる魅力に勝るからです。

実際にG1馬の父の配合時の馬齢を調べても、8割近くが10歳以下です。(表は2005年以降に生まれたG1馬を対象に集計)

種牡馬の馬齢
(配合時)
G1馬数 割合
4 歳以下 1 頭 0.6 %
5-7 歳 57 頭 36.1 %
8-10 歳 49 頭 31.0 %
11-13 歳 28 頭 17.7 %
14-16 歳 12 頭 7.6 %
17 歳以上 11 頭 7.0 %

種牡馬の負担軽減を意図した増額

例外的な値上げを最後にみておきます。

ディープインパクトは2018年に3000万円から4000万円に値上げしました。これはもう産駒の活躍とか需要云々ではなく、

  • 種付け頭数を減らし、体調面の負担軽減
  • 一定レベル以下の繁殖牝馬お断り

と理解していいです。限られたトップ種牡馬だけにみられる現象です。

最後に

実際の種付け料の変動額はこちらから確認できます。各馬の種付け料の推移からその理由を探っていくのも面白いですよ。